≪移動するということ≫ 阪田清子

移動するということ 阪田清子 2009

 

移動するということ阪田清子2009

 

移動するということ– lpomoea pes-caprae(L.) Sweet/Moving – lpomoea pes-caprae(L.) Sweet

#1採取場所:沖縄(中央)/collection point: Okinawa(center)

#2採取場所:奄美(右)/collection point: Amami(right)

#3採取場所:九州(左)/collection point: Kyushu(left)

植物(学名:lpomoea pes-caprae(L.) Sweet)、アクリルケース/Plant( lpomoea pes-caprae(L.) Sweet), acrylic cases

上野の森美術館「VOCA2010」/The Ueno Royal Museum

 

■作品解説:

 

阪田清子の≪移動するということ≫は、透明のアクリルケースにそれぞれ別の場所で採取された植物を封印した作品である。採取場所は、沖縄(中央)、奄美(右)、九州(左)の三か所であり、一見植物の標本にも見えなくない。

 

中に閉じ込められた植物は、学名をIpomoea pes-caprae(L.)Sweetといい、沖縄では「アミフィーバナ」、奄美では「ハマカンダー」、九州では「グンバイヒルガオ(軍配昼顔)」という。地域によって変わるのは名前だけではない。日本本土の「グンバイヒルガオ」は沖縄に持っていくことはできるが、その逆は検疫法により禁止されているのである。――沖縄の海岸でよく見かけるこの熱帯植物をどうやったら沖縄の外に出せるのか?

 

そこで、阪田が取りえた方法は植物の死だった。アクリル板の中に閉じ込められて枯死したその植物は、「命」と引き換えに沖縄県の外に出ることができた。

 

九州以北には生育しないという「グンバイヒルガオ」だが、ときとして黒潮に乗って東北の海岸に流れ着き発芽することがあるという。自然界では自由に行き来できるのに人間の法のもとではそれは許されない。阪田は人間が勝手に作った法や境界という目に見えない制度に注目し、その意味を問いかける。

 

1972年新潟に生まれ、美術を学ぶために大学の時から沖縄に来たという阪田は、帰りを待ちわびる家族と、いつまでも続く「よそ者」扱いのあいだで思考し、自分の不確かな立ち位置を植物や椅子など様々なモノたちに重ね合わせながら、表現活動を行ってきた。それぞれのモノに託した、場所への「不安」、「防御」、「抵抗」、「停滞」は、阪田の作品の根底を貫く。と、同時に無数の種や、椅子の脚、止まったカーテンには、いつか動き出すのではないかというささやかな「希望」も込められているという。(北原恵)

 

■  阪田清子 公式ホームページ

http://www.kiyokosakata.com/

 

カテゴリー: 阪田清子 | 投稿日: 2013年03月21日 | 投稿者: 北原恵